2019年7月15日月曜日

読後感「現代語訳:平家物語」
尾崎士郎著

遠い昔、平清盛とか源頼朝なる武士が存在していたこと、或いはその時代の武士集団が源氏組と平家組に色分けされていたこと、どちらの方にも名高い武士が沢山居て、短編的お話としては何度も聞いてきたことがある。しかしそれが一体いつ頃話なのか、恥ずかしながら系統だった知識が無かった。10日ほど前であったろうか、全く別の本を探しに神田の本屋街をうろついた際、目当ての本の代わりに目に留まったのが本書だ。

著者は昔いろんな小説も面白く読ませてもらった記憶があるので、購入してこの連休で読了することが出来た。流石に読み易く、読み始めると珍しいくらい読み進むことが出来たのは、偏に著者の筆力と言うものであろう。著者は若い時から琵琶を嗜んでいたとのこと、平家物語の原本は著者がはっきりしない(一説には信濃前司行長が著者との説もある)が、古くから琵琶法師が語り伝えていることだけは確かのようだ。

本書は古くからの伝え、即ち原本にかなり忠実なようで、全12巻と各項目立ては殆ど原本をそのまま使っている。但し、余りにも有名な冒頭の「祇園精舎の鐘の声・・」は本文としては採用せず、簡単な前書きに留めて、いきなり平家の専横ぶりから書き始めている。平安末期の約6年間に北は奥州から南は四国九州、北海道を除く全日本を戦乱に巻き込み、時には南北朝時代のように天皇が二人存在することもあったことも初めて知った次第。

登場人物が多すぎて、それを一々記憶に入れながら読まねばならぬだろうが、とても敵わない。平家組と源氏組と書いたが、それが明確に敵味方になっているなら話が早いが、寝返りだけに限らず、この色分けも相当に難しい。トルコがアメリカの味方か敵か分かり兼ねるように、敵対関係は現代も同じことのようだ。細かいことは余り気にせず、場面場面の面白さを追って読み進んだ。幼い時から話に聞いたりして記憶に残っている話が沢山出てくる。

しかし、今まで認識していた事との違いも多い。特に義経と頼朝の不仲説、義経が最終的に東北に逃げたのは記憶と一致するが、牛若丸弁慶との関係は全く出てこない。幼い頃、ある意味で弁慶はヒーローであった筈が、本書ではその他大勢の一人にしか過ぎなかったのが少し意外でもあった。




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