読後感「戦場体験者 沈黙の記録」保阪正康著

まだ幼い頃、我が父も軍属ではあったが南方(バリ島)に出征して足掛け5年も帰宅できなかった。父が帰国した時はすでに学齢に達していたが、その時もそれ以降も父から当時の事についてまとも聞くことは無かった。従って戦時中の経験は殆ど無いに等しい。戦後だいぶ経ってから映画で「真空地帯」「2等兵物語」「兵隊やくざ」等はだいぶ観たが、これらで戦争をの実態を理解するのは難しい。従ってどうしても、先の大戦に関する歴史は殆ど活字に頼るしかないのが実情である。

小中学生時代の戦争に対するイメージを敢えて言えば、いかにも幼稚で恥ずかしいがこうかもしれない。「国家にとって戦争とは好むと好まざるに関わらず、必要な時と場合がある。そして勝ち負けもがあるのも仕方なく、たまたま先の大戦では負けてしまった。負けた原因も多々あるのだろうが、次に戦うときは負けないようにせねばならない。」その後約半世紀の間に少しばかりの本を読むことで大分考えが変わった。

最近政府自体がおかしな右傾化傾向にあるので、社会に軍国主義への復古調がほう芽しつつあるのは非常に残念なことだ。いい大人でも先の大戦に対する反省より先に、自存自衛のやむを得ざる戦いであったとか、南京大虐殺は中国のでっち上げとか、第一我が国は朝鮮は勿論だが共産党の中国とは戦争をしていない、と真面目に言う人が多い。いい大人と言っても戦争の実態を知らないという意味では、小生よりはるかに若いのだから推して知るべしだろう。

自らを顧みれば彼らの無知を非難すべきではないかもしれぬが、マスコミを通して発言する立場にある人間には是非一度本書に目を通すことを強く薦めたい。
著者の保坂氏は戦後70年の節目に同じ思いを持たれた可能性もある。内容については何も書かずに読後感とするのは著者に申し訳ないかもしれぬ。逆に言えば、それ程一字一句の重みが大きい書物だった。

「戦争は絶対悪である。日本は今後如何なることがあっても戦争だけはすべきでない。」ただその信念が強固になっていくばかりだ。


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