2016年5月9日月曜日

読後感「倭国」岡田英弘著

今更古代史なんぞ読んでもどうなるものではないが、読む本もないので手にしてみた。しかし読み終わってみると、今までの認識を大分変える必要があるように思う。日本の歴史は「古事記」や「日本書紀」が編纂された7世紀ころから始まっており、「古事記」が最も古い歴史書と認識していたが、これがそもそも間違っていて、著者によると「日本書紀」の方が古いらしい。それに外国の文献で確認できる最も古い人物は「卑弥呼」と思っていたのも間違いらしい。

日本が古代に「倭」と称されていたのは何となく知っていたが、1世紀の漢時代の文書に倭国の使いが漢に朝貢して金印を授けられたとあるらしい。因みに有名な卑弥呼が魏に朝貢して金印を授かったとされるのは3世紀になってからのことだ。2千年近くも昔にどのようにして日本海を渡ったのか、ちょっと想像もつかないが記録もあるし、証拠も発見されているのだから仕方がなかろう。更に不思議なことは倭国であるが、場所が特定できていない。後に「任那」なんて場所が朝鮮半島に出現するくらいだから、ひょっとすると倭国の一部が朝鮮半島にあったのではないだろうか。

この本によると、古代の4~5百年間は日本と朝鮮半島との人物の往来は非常に多く、倭族の部落は双方にまたがっていたようでもある。従って倭王も沢山いたみたいだ。その中で特に強い酋長が漢とか魏とか隋まで出向いて、倭族の王の中の王として認めてもらっていたようでもある。当然朝鮮半島内も多数の部族に分かれていて、倭国と仲のいい国もあればそうでない国もあったとのこと。7世紀に倭国も参加して行われた白村江の戦いで消滅した百済なんて国との関係は現在の日米関係以上で、倭国に在留していた百済人も多数だったとのこと。

兎に角、天智天皇以前は神話の世界で聖徳太子も実在の人物かどうか怪しいとまで言われるが、真面目に中国や韓半島の資料を読み込むとそう捨てたものでもないらしいことが分かった。韓国人が池袋界隈には多く、全く見分けがつかないのも分かる。倭国時代から日本に至るまで、この間に天皇の系譜も河内、越前、大和と3系列あって、凄まじい殺し合いが続いて、やっと天武天皇時代に国がおさまり、歴史書の編纂になったらしい。

日本から見て7世紀以前の世界は、自国以外は現代の中国と韓半島が全てであるが、この何れもが激しい部族の争いで王朝らしきものが目まぐるしく変わっている。故にその関係を頭に入れながら読まないと何が何だか分からなくなってしまう。おまけに人名一つとっても現代は使われていない漢字が殆どで、日本語成立の由縁も書かれているが、非常に読みにくい本だった。

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