2015年10月27日火曜日

読後感「宇宙は何でできているのか」村山斉著

最近書店を覗いても読みたい本がなかなか見つからない。自分の書棚をボーと眺めていたら、なんでこんな本が置いてあるのか不思議に思う本に目が止った。新書版でそんなに厚いものではない。書棚の本に触ることは殆ど無いのだが、思わず取り出してパラパラと頁をめくる。と、中から領収書が出てきた。2010年10月8日池袋旭屋書店のものである。読後感をSNSに上げ始めたのは2006年からだから、当然既に読後感を書いている筈だが、調べても出てこない。

きっと難し過ぎて読み終わらなかったか、読んでも意味が分からなかったのだろう。購入した記憶すらないのだからどうしようもない。たまたま先日東大宇宙線研究所長の梶田梶田隆章氏のノーベル賞受賞が決まったばかりで、再び「ニュートリノ」がマスコミを賑わしている。2010年に理解できなかった脳味噌が退化こそすれ、進化することは100%ないが、暇だけは増加の一歩である。暇に任せて頁を最後まで繰ってみた。

結果的には、著者が一所懸命努力をしているにも拘らず「ニュートリノ」についての理解はゼロに近い。しかし面白いところも多分にある。普段全く考えてみたことが無い「宇宙」についてであるが、確かに自分は宇宙の一員であることだけは間違いない。先祖に思いを馳せると同時に更に遡って地球の誕生を通り越し、宇宙の起源に遡って考えるのは冥途の土産としては最適かもしれぬ。本書でも宇宙の起源は百数十億年前のビッグバンの一言で片づけられてるだけだが、宇宙とは何ぞやについてはかなり分かり易く説明してくれている。

大胆に言ってしまえば、宇宙を構成している物質について現在分かっているものは宇宙全体の星の重量を含め5%にも満たないものらしい。分からない物質が95%以上存在することだけが分かっているとのこと。科学て奴はなんて素晴らしいものだろう。見えないところにある地中や海底もさることながら空の星やお天道様を含めて、何が何やらさっぱり分からないことが95%も残されていることを発見してくれているのだ。何でも知ったかぶりする人間が多い世の中で、このような謙虚さを知るだけでも眠気と戦いながら読破した甲斐があるともいえる。

更にこの書で評価に値するところをもう1点。素粒子物理学と聞くだけで頭が痛くなる筈だが、全編を通じて数式がたった1件E= mcの2乗だけある(この有名な数式ですら疑い無しとは断言できかねるらしい)。代わりに多用されているのはポンチ絵同様の図式や写真で、著者の努力が偲ばれる。著者の期待に添えきれず申し訳ないが、現在急速に膨張しつつある宇宙の行く末が面白い。どこかで膨張が止ると恐ろしいことになるのかどうか、諸説あるようだが、現在のところ宇宙は未だまだ加速しつつあるようだ。即ち若いと言うことらしい。若さはいつでも何でも素晴らしい。これだけでもハッピーではないか。

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