2015年7月14日火曜日

これで大詰め?

衆議院の安保法制特別委員会審議がまともな審議が無いまま、との感じが強いのだが、与党側は今週中には採決との意思を固めた模様だ。昨日はその前段階として中央広聴会が設定された。生憎昨日は病院通いで終日時間を取られ、リアルタイムでの傍聴は諦めたが、今朝になって一通り広聴人の質疑を聞いてみた。与党側推薦の広聴人は元外務官僚の岡本行夫氏と同志社大学々長の国際政治学者の村田晃嗣氏。

野党側推薦は東京慈恵会医科大学教授で憲法学者の小澤隆一氏と同じく憲法学者で首都大学東京法学系准教授の木村草太氏。こちらは最近テレビですっかりお馴染みになってしまったが、逆にテレビから遠ざけられている感じの政治学者で法政大学法学部教授の山口二郎氏。面白いと思うのは、野党側が憲法学者を二人も推薦しているのに、与党は何故憲法学者を立てないのかである。今回の法制の違憲論に関して余程忸怩たる思いの証拠みたいだ。

案の定与党側の公述人二人は、ひたすら国際的安全保障環境の変化による法制の必要性を情緒的に強調するばかり。対する憲法学者の二人は当然と言えば当然であるが、集団的自衛権の憲法解釈の変更も今回の法案も、共に論理的に憲法違反であることを述べている。論戦ではないから意見が噛み合わなくてもいいが、論議の府である以上は与党側はもう少し論理的な論客を選ぶべきであったと思うが、公述人を選ぶことすら不可能なぐらい無茶な法案提出であることが印象に残った。

公述人に対する議員からの質問もあった。野党議員から与党推薦公述人に対し、近年の「国際的安全保障環境の変化」に関する質問である。『存立危機事態対処として政府が唯一的に例示している「ホルムズ海峡にばら撒かれた機雷除去」蓋然性があると思いますか?』案の定と言うべきか、お二人とも知見を持ち合わせないとして回答を避けている。野党が国会でしょっちゅう言うように蓋然性が無いのだろう。憲法学者たちは環境変化については特に否定はしない。本当に存立危機事態が迫っていて、最早1国で国を守りきれない、他国との共同作戦がどうしても必要ならば、さっさと憲法改正をして対処すべき、との主張。

正規の手続きを踏んでの憲法改正についてなら、誰も異を唱えない筈で、憲法の文面による定義を重視すべきことのみ力説強調しているだけのことだ。至極当たり前に聞こえる。自民党副総裁高村氏が「憲法学者は字面に拘るばかりで、実生活の役に立たない」のように発言したらしい。憲法学者の一人がいみじくも言っていた。「我々が文面の定義に拘るのは当たり前で、数学者が1+1=2の定義を無視して理論が構築できぬと同じである。」学者の意見さえもないがしろにする自民党代議士の劣化と驕りの行きつく先を思うと、反知性主義がきわまりつつある怖さを禁じ得ない。

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