2015年4月20日月曜日

読後感「国家の暴走」古賀茂明著

著者の古賀氏はテレビでしょっちゅう観ていたので、改めて著書を読むまでは無いと考えていた。ところが3月末のテレビ朝日「報道ステーション」降板騒ぎのせいで、恐らくテレビ業界からは完全に干されることになるだろう。そこで1冊くらいは読んでみようかと書店に行くと、3月末から今月初めにかけて沢山あったと思った古賀氏の著者が1冊も見当たらない。まさか書店が自民党に配慮して自粛した訳でもなかろう。改めてテレビの影響力の大きさを思い知った。

先週久し振りで店頭に見つけて購入したのがこの本。昨年9月の発行なので少し古いと思ったが、調べてみると一番新しい著書のようだ。序章に述べているのが執筆の動機、即ち昨年7月、安倍政権が集団的自衛権の憲法解釈を閣議決定で覆したことが契機となっている。恐らく国民の半数以上が、これはやり過ぎではないかと思った筈だ。著者は元経産官僚でもあるので、官邸と官僚の連携の呼吸がよく分かっている。

そこで著者は「日本版 NSC」「特定秘密保護法」「集団的自衛権の憲法解釈変更」を恐怖の三点セットと断じて、この三点が密接に連携しあう可能性が高いこと、そこから官僚の巧妙な手で生みだされるであろう戦争への道に警鐘を鳴らすつもりだったように見える。著者が本書で力説するように、安倍政権の政治手法や政策はあまり賛成できないし、近い将来アメリカの意向で戦争に駆り出される危険もあるやもしれぬ。

最終的には既存の政党以外に第四の政党、即ち、改革はするが戦争をしない政策を掲げる政党の出現が待たれると締め括っている。確かに真面目に考えれば、野党も頼りないのだから正論かもしれぬ。しかし、ここまで言ってしまうのが著者の幼いところ、官僚仲間からもはぐれ者扱いにされてしまう所以でなかろうか。全体を七章の構成で書いているのだが、第六章めまでは相当具体的で分かり易い意味もある。

その総括が新たな政党の出現を待つ、としたところが一匹狼の限界で、誰からも真のシンパシー(同意)を得られ難くしてしまうので、と著者の為に残念な気持ちを禁じ得ない。結局は負け犬の遠吠えに終わる運命かもしれぬが、言わんとするところには大いに共感を覚えた。最大の感想は本書のタイトル「国家の暴走」にある。即ち、現在のリーダー安倍氏は思いの外善い人で、日本が海外の戦争に加担するなんてことは考えていないかもしれぬ。

しかし、国家と言う一つの有機体は、その時のリーダーの意思に逆らって暴走する可能性があるのではなかろうか。官僚出身であるだけに、その危険を濃厚に感じているのだろう。余りものをよく知らない人が、下手にシステム(組織の体系であれ、法律の体系であるかもしれぬ)を弄ると何が起きるか分からない。安倍氏が本当に悪い人ならまだしも、善人であることの方が怖いように思えてきた。

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