2015年2月25日水曜日

農水相辞任

長いサラリーマン生活で霞が関の農水省に何度足を運んだことか、農家の出身ではないにしても、旧農林省、現農水省には知人も多いし格別の親しみを感じている。しかし何故かしら農水相は縁起が良くないみたいだ。今回もまた発足したばかりの内閣で農水相辞任となってしまった。昔は自民党農水族と言えば総理候補者の人材が集まり、政権内部で相当な発言力を持っていたと思う。

ここ10年くらいだろうか、どうも総理が農水省を軽く見て、出来の悪い人材を大臣に任命しているような感じがしないでもない。食料の供給は何処の国に於いても国家基盤の基本中の基本であろう。現在の日本は食料自給率が40%を下回っているとされている。数字だけからすれば安全保障問題にもなりかねない低い水準だ。但しこの数字はオリジナルカロリーベースで、穀物飼料が入っているので、実際に国民が口にする食料ベースで言えば70%を上回るとも言われている。

主食の米については国内産米はご承知の通り、供給過剰で減反政策を取ってきたくらいだ。気候は温暖で水にも恵まれている我が国は正に豊葦原瑞穂の国、別にゴルフ場を潰して畑にしなくても、いざとなれば食料供給の心配は無いと教わってきた。ただその時は野菜や魚が中心の我々が若い頃の食生活に若干戻るのかもしれぬ。幸い自然条件はこのように未だ安全ではある。しかし、農林水産業を守っていくために更に重要なのは農家と漁業関係者の存在である。彼らの存在が無くなれば元も子もない。

問題は農家や漁業従事者が減ってきていることだ。総理自身が「農業を輸出産業に」なんて大層なことを言って、農業改革を政策の大きな目玉だとしている。そしてその農業改革の柱が農協改革で、全中潰しと来たものだ。農協の方が遥かに実態が分かっているので「潰せるものなら潰してみろ」と開き直ったかどうか。兎に角、掛け声の割には非常に中途半端に終わっている。農業や漁業は自然相手の産業で、生産効率の向上が簡単と思う方が間違いだ。その上この一連の騒動に加えて今回の農相辞任である。

農協潰しもTPP加入も全て宗主国アメリカ様の言いなりであることは歴然としている。そのアメリカの下心が300兆円を超す農協マネーにあり、郵政改革と同じ伝でそれをアメリカに取り込もうとする意図を知ってや知らずや、何で政府がお先棒を担ぐのか理解に来るしむ。加えて農林水産業の大切さが分からない都会育ちの政治家たちがこれまた「生産性の向上」という経済学者のお題目に悪乗りして机上の空論を並べたてている。

農水官僚の中には日本の食料産業の構造をを正しく理解している人は沢山いる筈だ。その官僚たちを強引に政権の方向、ひいてはアメリカの意向に沿うように仕向けているのが最近の農水相であるのは間違いない。西川氏が辞任することで、少しは現場を重視する骨のある農水相が誕生してくれればよかったが、今度の林氏に至っては西川氏以上に農業とは遠いポジションである。親爺さんは通産官僚、自身は東大、ハーバートの出身と来れば英語は得意だろうが、である。

現在厳しい環境の中で農業を守っている人たちの思いはどうだろう?「俺一代を以て辞める」という人が増えたらどうするのか?農林漁業は大学を出た人達だけでは成り立たない産業であるのは自明のことだが、それが分かっていないようなので恐ろしい。

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