2013年8月19日月曜日

立つ瀬を捨てる妙

乞ご容赦。趣味の世界の話なので関心無い方には分かり難いと思います。
下手の横好きで、自分はからきし弱いのですが、テレビでプロの碁を見るのが大好きで、NHK囲碁トーナメント番組を毎週必ず録画して観るのが日曜夜の習慣となっています。昨夜も食事を終ると20時までは「BS日本のうた」を婆さんと一緒に見て、その後は一人寝室に籠って囲碁番組をゆっくり観ました。昨日の対局は一方が張栩氏、勿論9段で若い時から数々のタイトルをものにし、まだ33歳ですが世界に名前が知られた大棋士です。

碁を打つ人であれば恐らく知らない人がいないのではないでしょうか。若い時の長嶋茂雄選手のような人です。対する棋士はこのトーナメント初出場で、若干18歳の余正麒さん。実は余さんのことを忘れていましたが、このトーナメントの第1戦で小林覚さんと言う長野県松本出身の大ベテランを破る金星を挙げていますが、まだ3段です。将棋の段位で言えば未だプロとして認められない段位です。私もこのトーナメントに3段の棋士が出場したのを見たことがありませんでした。

張栩氏はシード選手ですから第1戦目。勝敗は自ずから決まっていると思って観ていました。両者とも台湾の出身、解説も台湾出身のベテラン棋士の王立誠さんでした。王さんも当初は余さんのことを余裕をもって褒めたりしていましたが、中盤になると、相手の強さを知らずに少し打ちすぎているみたいなことを言っています。碁が少しわかってくると、一手一手を交互に打つゲームですから、この「打ち過ぎ」が如何に危険かと言うことが分かってきます。

我々が笊碁を打つ時は10目差20目差の勝ち負けが幾らでもありますが、プロの碁では3目差以上は大差と言われるほど、微妙なバランスのゲームであります。昨日の解説を聞いていると、王さんは明らかにそのことを指摘していたわけです。ですから常識的に言えば、余さんは打ち過ぎを咎められてあっさり負けとなる筈でした。ところがです、結果は余さんの勝。囲碁は目数の差はあまり問題にしませんが、4目半の差でした。

最近スポーツの世界では水泳と言い、ゴルフと言い若い選手の活躍が目立ち喜ばしいことです。囲碁の世界にも若い選手が頭角を現すのは嬉しい限りです。余さんは関西棋院所属ですから大阪の方のようです。最近の囲碁界は大阪勢が頑張っていますので、東京からも若手の強い棋士が誕生することを期待しましょう。

棋士の話だけで終わってしまいそうですが、肝心の昨日の勝負の見どころは余さん自身が最後に感想を述べましたが、捨石の妙にありました。解説者や対戦相手の名人上手がまさかと思う「要石」をものの見事に捨てたのです。若いのによくもやってのけたのか、若いから出来たのか分かりません。何れにしても見応えのある一番でした。

0 件のコメント: