2013年6月12日水曜日

お役所仕事

多くの著書がある近藤誠さんは日本でも有名なお医者さんの一人だろう。残念ながらまだ1冊の著書も読んでいないが、書店でしょっちゅう立ち読みしているので、言わんとするところは大体想像できる。比較的近著のタイトル『医者に殺されない47の心得 医療と薬を遠ざけて、元気に、長生きする方法』(アスコム 2012)が象徴しているように、年を取ったら余りジタバタせずに病気と上手く付き合って、適当なところで死ぬのが幸せでしょうと仰りたいようだ。

どの本か記憶が定かではないが、店頭で瞥見して印象に残った次の一節がある。「診断結果を、加齢によるものですね、と言ってくれる医者はある程度信頼していい。」小さい頃からの友人で今でも親しくさせて頂いているお医者さんも似たようなことを言っている。健康保険のお陰で医療費負担が1割になって喜び、毎月几帳面に医者通いしているので偉そうには言えないが、この先生方が仰ることがある程度分かるような気がする。

小生のように理屈を知りながら不心得に医者通いをする老人が多いせいで、健保関連の社会福祉財源を圧迫して国家財政を悪化させているのかもしれない。今日はそのことを棚上げして書きたい。昨日、区から1通の分厚い手紙が届いた。差出人は区の高齢者福祉課介護予防係、表に「生活元気度チェック」調査回答のお願いと枠囲いしてある。調査依頼書を読むと、今年度から健康診断とは別に実施するもので、調査票は医療機関に提出せずに直接返送すること(ご丁寧に返送用封書が同封されている)。

回答者には、1~2か月後に「結果アドバイスと介護予防のパンフレットを送付します。」とある。親切ご丁寧なことなので有難く思うべきかもしれないが、豊島区の高齢者(65歳以上)人口が気になって調べてみた。約5万4千人(総人口約27万人の20%)である。当然ながら要介護予備軍もそれなりには居るだろう。それにしてもだ、5万人を超す全高齢者を対象に、手間暇コストが何ぼか知れないが、こんなことをする発想は普通のビジネス感覚からは出てこない。

冒頭に紹介した近藤先生からすれば、健康診断すら几帳面に受けることが果たしていいのかと言うことになる。国民をして健康に目覚めさせ、以て医療費の増大を防ぐとの名目に異を唱えることは出来ない。問題はそこから先の具体論の筈、区役所の官僚が考えることも霞が関の官僚の考えも大同小異。大義さえあれば、後は十把一絡げにして己の権益の確保だけに専念するように見るのは僻目だろうか。

お役所仕事に於いては、いつも「費用対効果」が考慮されないし、何をするにしても平均値をもって基準が形成され、基準による公正だけが重視される。結果、無駄な事業がはびこり、救われない人間が大量に発生する矛盾を如何にすべきだろうか?

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