2013年3月21日木曜日

読後感「おどろきの中国」 橋爪大三郎×大澤真幸×宮台真二

先月20日に発売され、今日までにいろんな場所で頻繁に書評が上がるし、書店では平積みが続いているから好評な売れ行きなんだろう。3人の社会学者による中国の観方を鼎談で纏めている。現在我が国から中国を見るといろんな問題を抱えているし、個人的にも中国には親しみを覚えていたが、毒入り餃子から始まって最近の環境汚染の状況を知るにつけ、2度と中国旅行をする気が失せてしまった。世論調査をすると、中国を嫌いとする人が8割に達しているようだ。

私はもう旅行はしないだろうというだけで、別に中国や中国人が嫌いと言うことではない。ただ広大な国土と我が国の10倍以上の人口を考えると分かり難い国であるのも事実。その解明の一助になればとの思いもあった。著者3人が社会学の先生でもあり、橋爪さんは特に中国研究についてのスペシャリスト、夫人が中国人で中国関係の著書もあるとのこと。この本の執筆に当たっては橋爪夫妻のアレンジで約1か月3人で中国各地を取材旅行をしている。

この本の冒頭にも記されているが、成程我々現代の日本人は非常に近い国でありながら、中国のことを知っているようで知らない。明治維新までの知識人は、逆に世界のことを中国経由で情報を吸収していたので、現代人と比較にならない程中国を知っていたし、知ろうと努力もしていた事だろう。さて本の中身であるが、普通の見聞録とは異なり、互いに学者の知識を前提にしてのことだから少し読むのが大変かもしれない。日中間の歴史だけに留まらず、明治維新以降の国際情勢を含む世界の文明史や宗教問題についてもある程度分かっていることを前提に話が展開される。

勿論多くの知識を持ち合わせない小生にとしては、読破に時間がかかったのもやむを得ない。しかし、鼎談の中身は非常に濃く、現代の日中間の問題が何に起因するかがぼんやり分かった思いである。そもそも中国は「国家」なのかと言うことから論議が始まっている。確かに歴史的には多民族国家として2千数百年又は4千年と言われる歴史を持っているが、現在の北京政府がずっと続いていたわけではない。ごく当たり前のことだが、これとて我が国と比較して考えてみれば不思議なことだ。

唯一歴史を貫いている事柄は漢字を用いていることに尽きるかもしれない。余計なことだが確かに我が国も中国の辺境の一部であった時代も否定はできない。結局3人の偉い先生が議論を交わしても、中国を一言で括ることは出来なかった。だが、中国人の行動様式や中国政府の態度については、かなり理解できる解説をしてもらえた。日中関係の行き違いについても見解が述べられているが、どうも日本側の歴史認識が、囲碁で言うところの「勝手読み」になっているようにも感じてしまう。

石原慎太郎氏に読ませたいとの書評もあったが、どうしようもない年寄りではなくて、若い人にぜひ薦めたい。

0 件のコメント: