2012年11月20日火曜日

景気と優先順位

余り好きでない物書きに立花隆氏がいる。雑誌記者時代の調査記事「寂しき越山会の女王」には敬意を払うに吝かでないし、その後も多くのドキュメンタリー、ルポルタージュで名声を博していることにケチをつけるつもりはない。好きになれない理由は、彼が時々政治評論家みたい振る舞いをすることに起因する。その彼がいつの頃からか月間文藝春秋の巻頭随筆のトップを飾るようになった。

今月売りの12月号を見ると「日本再生-20」となっているから既に20回目、2年近くになるのだろう。城山三郎氏や阿川弘之氏が書いていた時代は楽しみにして読んでいたが、立花氏になってからの記事については記憶が皆無だ。ところが今回の随筆「有人宇宙開発無用論」珍しく全面的に共感を覚えた。医学や科学にとりわけ深い関心を寄せる著者であるが、全くいいことを言っている。

曰く、有人宇宙開発は人命にかかわる事故がつきものであること、費用が掛かりすぎることの2点を指摘している。米国人が人命を軽んじている訳でもないだろうが、日本人にはチャレンジャー号事故やコロンビア号事故のような大事故を乗り越えるようなタフな精神はないだろう。又、日本の財政は、いま世界の歴史上類例がないほど、巨額の借金を抱えて殆ど破たん状態にある。JAXA予算は、ほぼ年間2000億円のペースで減り気味で推移してきた。諸般の事情を考えればこの傾向が反転する筈はないだろう。

独自の有人にどんな意味があるかと言えば、国威発揚ぐらいだろう。そんなことは国威発揚が何より大切な中国に任せておけばいい。有人はあくまで国際チームの一員としてやる立場を貫き、独自性を発揮できる得意技術分野で勝負すべき。以上が主たる論点であり、これには全面的に賛成する人が多いと思う。

立花氏でさえこんな論陣を張る時代なのに、ヒートアップする選挙のためか、自民党は景気回復のため、国債をどんどん発行して日銀に買わせ、札を大量に刷らせることが必要とぶち上げた。この発言で為替が反落、株価も日経平均が一気に500円も上がったのも事実。批判的な人に言わせると、戦争でも始めるのなら別だが、正真正銘の禁じ手とのことで経団連でさえ警鐘を発している。経済や株のことは何も分からない。しかし、景気が良くなれば株は上がるだろうが、株が上がったから景気が良くなるとは思わない。

ホリエモンに聞けば別の考えになるかもしれない。

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