2012年6月2日土曜日

大先輩 栗林忠道大将

たまたま母方実家の菩提寺が同じなので、昨年のゴールデンウィークに栗林大将の墓に詣でた。数年前に梯久美子さんの「散るぞ悲しき」を読んで、栗林大将が高校の大先輩で、しかも菩提寺に同じ縁を持つことを知り、少し誇らしっく思い一度お参りしたいと思っていたところ、兄弟従妹から信州での花見を兼ねて誘ってもらい機会を得た。きっと参拝者が多いのだろう、大将の墓前には新しい花とウィスキーがひっそりと置かれていたのを覚えている。

あれから1年以上過ぎた昨日、母校長野高校の東京同窓会が開かれた。母校は先輩から後輩に至るまで優秀な人物を輩出している。懇談の前にこの中から一人か二人の同窓生が講演をしてくれる。毎回面白い話が聴けるので、1年に3回ある同窓会には極力出席を心掛けている。今回は講師がお二人、一人は2年先輩の才口千晴氏、司法の世界で最高裁判事まで上りつめた方だ。

才口先輩は昨年の11月、母校の先輩である栗林大将と4年後輩の今井武夫少将の顕彰碑を栗林大将の菩提寺に建てられたとのこと。その紹介を兼ねての講演だった。才口氏は、日本はすべてに閉塞感が充満している、この現状を早く打開するためにとして、我々一人一人が道理を弁えてほしいと訴えられた。心は「先輩二人の軍人のように、全ての日本人が正しい世界観と愛国心、責任感と潔さをもう一度取り戻してほしい。」に尽きるかもしれない。


「家人が位階人臣を極めたのだから、これからは口を閉ざして黙っていろと言うが、世の現状を見て日本の将来を考えると黙っていられなくなった。」重ねて、戦後営々と築いてきた資産を食いつぶしつつある日本の現状を憂い、次のように述べられた。「今や政情不安や行政の体たらく、司法の危機でもある。」特に最後に司法の世界について、司法改革の名のもとに進められている検察審査会制度や裁判員制度にも問題点が多いと指摘されたのが印象的だった。

世代的にほぼ同世代だけに、謂わんとされるところがいちいち胸に落ちる。近い将来に改めて松代の明徳時を訪れ、才口先輩達の奔走で建立された碑を見に行く気になった。碑に刻まれた栗林当時中将の有名な辞世、玉砕覚悟の最後の総突撃直前に大本営宛てに打電された。
「国の為重き務めを果たし得で矢玉盡き果て散るぞ悲しき」

才口氏は最後に、この電報を受診した当時の陸軍省は「散るぞ悲しき」を「散るぞ口惜しき」と改ざんして発表した。日本の官僚は(昔も今もとは仰らなかったが)恐ろしいことをやりますね。と結ばれた。

もうお一方富沢さんのお話もすごく面白かったので、明日か明後日改めて報告したい。

2 件のコメント:

Don Koba さんのコメント...

栗林大将も、山本五十六も共に、米駐在武官としてアメリカの国力を知っていたから、戦争すれば負けると知っていた。だから、初めは反戦だった。しかし天皇の前に出ると五十六は「2,3年は暴れて見せます」と言ったとか。軍神と崇められた五十六も結局は、職業軍人としての地位を捨てることはできなかった。天皇自身、2.26事件では、皇位を失う危険さえ意識していたとも(松本清張の絶筆「神々の乱心」)。栗林大将のことは、小学校時代、よく親父(長野中学の先輩)からも話を聞いていた。栗林もアメリカとの戦争には反対だったが、結局、軍部の主流を説得できず、逆に最も命の危険性が高い硫黄島に左遷されてしまった。軍部及びそれを熱狂的に支えざるを得なかった国民は現実を知らせれないまま、言う通りに動かされていた。正論が正論となりうるのは、本当の情報をより多くの国民が理解しているしかないのかも知れない。原発の再稼働に関しても、言葉遊びに踊らされているようで、甚だ、心もとない。

senkawa爺 さんのコメント...

Don Kobaさん
コメントをありがとうございます。
>原発の再稼働に関しても、言葉遊びに踊らされているようで、甚だ、心もとない。
全く同感です。
政府にしても橋下大阪市長や関西連合の知事さんたち、一体何を考えているのでしょうか?分かりにくいことこの上ありません。
結局は報道機関が、その場その場無責任な発言を無責任に丸写しで報道するからではないでしょうか。