2011年6月24日金曜日

読後感「日本中枢の崩壊」古賀茂明著


経産省の現役官僚の著書で、書かれている事は読まなくても大凡推測出来るのだが、つい暇に任せて手にしてしまった。もう1年くらいになるだろうか、著者の事はマスコミでは何度も取り上げられているし、テレビでも何回か見た事がある。一時は内閣官房に出向していた事もあるぐらいだから、きっと将来を嘱望されていたと思ったが違うようだ。経歴を詳しく見ると、1980年入省で、東大法学部出身としては決してハッピーではない。2008年にやっと国家公務員制度改革推進本部事務局審議官だから、いわゆるエリートコースからは離れた道を歩いてきた人だと言える。

逆に言えば、役人にはあまり向かない常識人だったのかもしれない。従って小生がいつも言うように、霞が関官僚が壟断するこの国のかたちについて強い危機感を持って、晩年(役人としての)になって、一般的な市民が感じている正論を、声を大にして訴える気持ちになったのかもしれない。確かに正論だから渡辺喜実氏が彼の論理に飛び付いたのも理解できる。その後、政権が民主党に代わり、2010年の参議院予算委員会に「みんなの党」の参考人として呼び出され、民主党政権の公務員制度改革への取り組みを「不十分だ」と批判した。これに対し仙谷官房長官が「こういう場に呼び出すのは彼の将来を傷つけると思います。優秀な人であるだけに、大変残念に思います。」と発言はあまりにも有名。

本の内容も、公務員改革については既に十分聞いている事だし、お説ご尤もとい言うしかない。しかし惜しむらくは、国家改造を考える時は、政治を如何に動かすかが問題である事は言を俟たない。著者も公務員の制度改革だけでは、何度やっても蛇が脱皮を繰り返して生き延びるのと一緒と認識はしている。総理官邸に理想を言えば米国大統領府のように、強力なスタッフを揃えて総理大臣が指導力を発揮しなければ、どうにもならないであろうことは認めている。普通であれば、そこで如何に政治を動かすかと言う事を考えると思うのだが、仙石氏や経産省幹部に睨まれて干し上げられてしまったようだ。

こういった大改革は、彼のような所謂エリートでない人間の力を結集することがない限り達成しえないのだろうと思った。著者も組織から疎外され、可哀そうと言えば可哀そうだが、一般市民は同意する事だろう。どうせの事だ、本でもなんでも徹底的に公務員制度改革を訴え続けてほしい。余計な事を最後に付け加えるなら、公務員制度改革以外についても大分筆が走っているが、これは力量不足を見透かされてしまうので、これからは慎重を期された方が良いと思う。



2 件のコメント:

kiona さんのコメント...

話題の人による話題の本ですね。
このあたりでも話題に。
http://agora-web.jp/archives/1347646.html
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51720936.html

'地デジチューナー手配り' 程度には改革が進めばいいのですが。。

senkawa爺 さんのコメント...

KIONAさん
コメントをありがとうございます。

話題に悪乗りして出版したの感が否めません。外務省の現役官僚で小泉政権の対イラク政策を批判して政権批判して受け入れらず、辞職した後に強烈な批判書を出版した天木直人氏が「古賀茂明氏の身の処し方は間違っている。潔く辞職してから批判すべき」と言っています。こちらの方がまともだと思います。