2011年5月17日火曜日

想定通り

「こうしてこうすりゃこうなると、知っててこうしてこうなった」地震大国日本の原子力科学者の殆どが、今回の大災害は起こるべくして起こり、結果として最悪の事態に至る事は予め想定していた事は今や明らかである。当然科学者の端くれは経産省にも在籍し、保安院3月12日の記者会見で核燃料溶融の可能性について正式に言及している。誰の指示に依るかは明らかにされていないが、この人(中村審議官)は即日更迭されて、後任はご存じかつらの事務官僚西山氏になってしまう。経産省人事であるが一説には「菅首相と枝野官房長官は、中村審議官が国民に不安を与えたと問題視し、もう会見させるなといってきた」(経産省幹部)もある。

徒に国民の不安を与えるのは褒められた話ではないかもしれない。戦時中の大本営発表の大部分も「国民に不安を与えないための」配慮だったかもしれない。事に臨んで最悪の場合を想定しないリーダーはいないだろう。その想定を口にするかしないかは、リーダーが国民を信頼するかしないか、又は同じ船に乗っている同胞意識が共有されているかどうかの差であろう。封建領主と現代の政治指導者を同列で論じてはいけないかもしれないが、武士であった封建領主がどんな教育を受けたか詳しくは知らぬが、戦に臨むに当たっては、己は当たり前だが部下から領内の百姓町民に至るまで死を覚悟させるのが当たり前だった筈だ。であるからこそ指示することが可能になり、領民全員の一致結束保ったのだろう。前大戦の時でさえ、小生は子ども心にではあるが、この戦に負けると自分も含め男は全員鎖につながれてアメリカに拉致され、奴隷になると思いこまされていた。

前大戦の敗戦結果が最悪の想定通りでなかったのは幸いだった。しかし今回の原発事故は今のところ科学者の想定した最悪の事態に向かって推移している。発生から2カ月以上経過しているのに、国家のトップから最悪も事態への言及は未だに無い。トップに近い政治の世界では、全員が暢気な父さんで、互いに過去の責任追及と言い訳のやりとりに終始するばかり。マスメディアやそこに顔や名前が出る連中も、その尻馬に乗って己の売り込みに懸命に見える。今日本はそんな事をしている場合なのだろうか?彼等はメルトダウンからチャイナシンドロームが起きようと、東京も被曝で避難を余議されなくされようと、自分だけは助かると想定しているのだろうか?

事実関係の一部が2カ月も経過して公表されると、メディアの論調も少しずつ変化してきている。しかし事務屋や政治家の話しの事実関係は全て科学者の予見の後追いにすぎないので、極力ネットで科学者の論評を読むようにしている。しかし科学者でさえ、再臨界の可能性迄は指摘してくれるが、その先についての言及は情報が不十分だと言う事で明言を避けている。広瀬隆氏が子供を留学させる決意を述べている事くらいが精いっぱいかもしれない。

前にも書いたが、こちらは年寄りなのでチェルノブイリに居住する老人と同じ心境に近い。しかし可愛い孫の事はやはり心配である。赤ん坊が一人に中学生が二人いるが、二人ともお勉強の方はどうもチョットである。とても留学なんて想像だにつかない。困った事だ。

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