65歳頃から山歩きを始めた身なので山の遭難については大きな関心がある。僅か5,6年の経験でも危ない事件が何回か有った。この本は戦後の登山がどのように発展し、それに伴ってどんな遭難事故が起こるようになり増加してきているかについて統計や実証を交えて詳しく説明してくれている。極端な言い方かもしれないが、戦前までは登山と言えば殆どが専門家がするものであり、冬山に登るのが登山でもあったようだ。確かに一般人のレジャーとしての登山は戦後、それも生活にある程度の豊かさが出てきてからの事だろう。
この傾向は同時に遭難事故も増加させる結果に繋がるのは大いに納得できる。遭難を避けるには何と言っても体力装備共周到な準備をして、且つ慎重な行動を取るに尽きる事は著者が指摘するまでもない。しかし最近の事故実態を見るとあきれるようなご粗末さが目立つようだ。山登りは単独行であれパーティー登山であれ、起きた事については全て「自己責任」である事が再三強調されている。改めて指摘されるまでもないが、読むと事故後の裁判沙汰が多い事に驚いた。遭難救助に関して警察や消防の公的機関の出動が全て無償に関しても著者も疑問視している。全く同感である。税金で賄ういわれはないだろう。罰金としても何らかの科料が必要ではなかろうか。
本書で指摘しているところについて我が身を振り返ると多々反省点がある。先日掛かり付けのお医者さんに指摘された事も同じ「自分の馬力を考えた時、未だ高速道路を走る事が出来ると思っていると危ない。仮に同じように時速100km出せたとしても、新車のそれとポンコツ車では負荷に物凄い違いがある事はお分りでしょう。初老の人はこの事になかなか気付かないのです。」何方にでもお薦めできる本ではないが、自分にとってはこの言葉を改めて思い出しただけでも読んだ甲斐があった。
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