2010年2月3日水曜日

『検察の正義』 郷原信郎 著

今週まとめて読んだ検察関連書物最終の3冊目である。郷原氏については、小沢民主党党首の大久保秘書が西松献金問題で逮捕されてから民主党によって設置された「第3者委員会」の委員でもあったし、その後もいろいろなメディア取り上げられている。私も事件の少し前に偶然彼の著書『思考停止社会~「遵守」に蝕まれる日本』を読んでいたので、西松献金問題以降ずっと注目していた。特に「第3者委員会」でロッキード事件の特捜検事として名を馳せた堀田力氏のヒヤリングで生の姿を見て、クールな人だな~と感心したのを覚えている。

この本は比較的クールではあるが素人向けに書かれている。先ずは日本の司法がどのような概念で形成されているかを極めて簡潔に説明している。まさに私が求めていた参考書にぴったりと云う感じ。曰く「司法の問題は一般市民の塊の外側に存在する、平たく言えば主に犯罪を無くすためのものだから一般市民が知らないのは当たり前」と嬉しい事を言ってくれる。そこから入って段々と検察の役割と検察が背負っている印半纏の正義について論じている。

検察が日本社会で果たしてきた役割と現代生じつつある問題点を、具体的な経験などを踏まえ描こうとしている。即ち著者は検察が社会の変化に対応しきれず独善に陥りやすいとして、そのあり方を真剣に見直す時が来ていると指摘している。先に読んだ2冊に比べればボリュームは全然少ないが大変分かりやすい。

本論とは関係ないかもしれないが、著者の経歴が冒頭に簡単に記されている。彼は元々東大理学部の出身で当初は三井鉱山と云う財閥系企業のサラリーマンになった、しかしこの企業の官僚体質が嫌で2年足らずで辞めて、独学で司法試験を通り弁護士を志す。ところが指導教官にやや強引に検察に引きずり込まれたようだ。成程、頭も良いしクールな訳だ。

もう1箇所印象的だった記述「ロッキード事件が検察にとっての日本海海戦で、この勝利が検察の大艦巨砲主義を生んで後の暴走につながっている。」会計の知識も全くない検察官が正義漢面してホリエモンや村上ファンドのおじさんの行為を断罪できるのだろうか?当時テレビによく出演していた堀田力(良い人ぶったこの男、私は大嫌い)何かと噛み合う筈もない。小沢問題についての記述は極めて少ないが、関心ある向きには是非お薦めしたい。

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