2024年9月20日金曜日

読後感「裏金国家」金子勝 著

 久しぶりに読み応えのある書に出会った。<日本を覆う「2015年体制の呪縛」>とサブタイトルがついている。一昨日夕方書店で得購入して昨日1日で一気に読んだしまった。総裁の「顔」を変えたところで、自民党の根っこは何も変わらない――。腐敗・衰退著しい日本の根本要因を徹底検証した、渾身の作。と宣伝はうたっている。

著者が指摘するのは安倍政権第2期2015年に安倍晋三氏によって、一種のクーデターが行われたと指摘する。「2015年7月16日衆議院で、続いて9月19日参議院で、憲法を無視した集団的自衛権を認める安保法案が可決された。その時著者は、国会を取り巻くデモの中に居たそうだが、小生には全く関係の無いことだった。今更悔いても遅い話だが、以来憲法を無視する政治が常態化するようになる。先ず言論の封殺が始まった。自民党に不都合な言説を述べる人間は政治力でメディアから追放されていくが、裏で手を握っているトップはそれを黙認していた。他には出世の遅れた公安関係者による官僚への締め付け等々。

自民党政治家は活動に金が掛かると言うが、これもあまり当てにできない。彼らが言うところの「活動」とは地方に金をばらまいて細胞を増やすことに他ならない。しかもその金は元は税金である国費や不正に入手した長年にわたる「裏金」である。そのように既得権益や縁故者を重視した結果もたらされたのが仲間内資本主義。古い重工業が優遇され、縁故主義による仲間内資本主義がはびこる日本社会。先進的情報通信やエネルギー転換など、先端産業分野から取り残され、軍事費だけが拡大して国民生活をどんどん貧しくしていく日本経済の構造的問題。

一方で政治家の質がものすごく低下している現実がある。これは言うまでもなく自浄作用を全く期待できない自民党政治家の世襲構造にある。この悪弊のため当然のように噴出した「裏金」問題があるが。一事が万事で総裁の顔がどのように変わろうと期待はできない。民主主義を破壊し、国際競争力を低下させた背景にある「2015年体制」の正体を分かり易く解説して最後に、著者なりの処方箋を述べている。

経済学者の著書故に少し難しいところもあるが、産業政策、金融政策も含め何れも読んで損は無いだろう。

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