2024年9月1日日曜日

読後感「大衆への反逆」西部邁

昨日読了するまでたっぷり2か月以上掛かっているだろう。感想もまともには書けないのでご容赦願いたい。小生は著者の講演を2回ほど聞いた経験がある。主催者は確か自民党代議士の比較的小さな資金集めパーティーだった筈だ。その時の印象は日本政府のアメリカに対する弱腰とアメリカ政府の横暴を強く非難していたので場違いな面白さを感じたものだ。その時、氏は「私はCIAから目をつけられているから、そのうち殺されるかもしれない。と冗談交じりに話していたことを覚えている。

風変わりな人だとは思っていたが、まさか自殺するとは思わなかった。話は変わるが、高校時代の同期で東大にストレートで入学したのに1年足らずで自殺した友人がいた。著者も彼も頭がずば抜けて良かったことは共通してると思う。友人がどのくらい読書家であったか知らぬが、著者の読書量と記憶力は想像を絶するものがある。以下内容に踏み込みたいが、重すぎるので省略する。

何れにせよ著者は現代日本を高度に大衆化した社会とみなし、これに一撃を加えたかったのだと推察する。大衆は個が集合することで発生する現象ではあるが、そのことで逆に国民から個性が奪われつまらぬ社会になりかねないことを内心心配したのだろう。著者は学生時代は60年安保闘争真っただ中、ブントと称された過激派の一員。もちろん逮捕歴もあるが、卒業後は母校東大で教職に就き、アメリカスタンフォード大学とイングランドにも留学して、西欧と言っても自由主義と保守主義の違いなんかも十分体感している。

更には東欧諸国も旅行して、旧ソ連圏諸国が国民に残した物質的、精神的負の遺産も確認済みだ。その上で、目下日本がどっぷり嵌りつつある大衆化社会の危険に警鐘を鳴らしたかったに違いない。何もアナクロ的に旧に復せという訳でもないが、何でもかんでも民主主義万歳も困り者だと言いたかったようだ。政治面でも鋭い指摘がある。田中角栄氏や大平正芳氏、特に大平氏については第一秘書であった伊藤昌哉氏の著書「実録自民党戦国史」を引用して面白く解説している。

正義に関する欧米との違い、文明比較、自由に関する意識、どれをとっても少し難しいが社会学を少し齧った経験がある小生には興味深かった。 

2 件のコメント:

呑兵衛あな さんのコメント...

西部邁 。懐かしい名前です。
NHKが「坂の上の雲」を、44分版、全26回で再放送するそうです。

senkawa爺 さんのコメント...

呑兵衛あなさん
半端な感想にも拘らずコメント頂き恐縮です。
もう亡くなって6年も経つそうで、懐かしい名前になってしまいましたね。