2023年5月19日金曜日

読後感「キューリー夫人と娘たち」クロディーヌ・モンティユ著 内山奈緒美訳

 毎週1回はオンラインミーティングで顔を合わせている高校同期の友人から強く薦められて読んでみた。キューリー家々族3人の伝記。キューリー夫人は言うまでもなく著名な科学者。但し、残念なことに小生は科学音痴である上にヨーロッパには行ったこともなく、歴史についても殆ど無知である。科学者の伝記で記憶にあるのは、小学生時代に絵本で読んだ野口英雄医学博士と4年生時代に父が東京出張の土産に買ってきてくれた物理学者湯川秀樹博士の二人だけだ。

キューリー夫人も湯川博士と同じようにポーランドの学者家族の出身。年齢的には1865年生まれだから1907年生まれの湯川博士に比べると大分先輩に当たる。江戸時代末期から明治初期の世界情勢は、学生時代を通じて近代史を全く勉強するチャンスが無かったので、これまたチンプンカンプン。キューリー夫人の生国ポーランドについて知っていることもワレサ氏に依る連帯運動の言葉だけ。19世紀末の欧州を想像しながら一応読み終わったが、著者の意図をどこまで汲み取ることが出来たかは甚だ心許ない。

夫人の幼少期はポーランドはロシア帝国の支配下にあり、その後もドイツやソ連に占領されたりして共和国にとして独立できたのはずっと後のこと。夫人一家は不安定な首都ワルシャワで暮らす中、若かった本人(マリー)は勉強で優秀さを発揮し、さらなる高みを目指してパリ行を決意して断行する。高みとはあらゆる鉱物が発するエネルギーの研究、物理学の世界。ここでも彼女は大きな成果を上げ、共同研究者と個人的には結婚。

放射線研究はの成果は著しく、男性主体の学会でも認められて、夫妻揃ってノーベル賞まで受賞。しかしその夫が馬車に引かれて亡くなる悲劇に遭遇。二人の子供を抱えながら研究も継続。ついには2度めのノーベル賞受賞という輝かしさ。その間、彼女は当時の男性優位社会に対して戦いを挑み、多くの社会改革を実現。第一次世界大戦後に創設された国際連盟の今で言うところのユネスコの座長になったりする。活躍の範囲が広すぎて書ききれない。しかし研究対象の放射能は彼女の腎臓を蝕み67歳で没する。

残された娘二人だが、長女は両親の研究を手伝っていたのでそのまま物理学の道に進み、ノーベル賞を受賞。次女は文系でジャーナリストとして大成功。アメリカ大統領夫人から熱烈な支持を受けてホワイトハウスに宿泊するするまでになる。興味深いのは家族仲は決して悪くないが、2度に亘る世界大戦によって、ノーベル賞まで受賞した姉は共産党支配のソ連邦に保護され、ジャーナリストになった次女は世界中を駆け巡った挙げ句、結局アメリカ市民となって103歳まで生き延びた事実だ。

3人共に貧しい中から立ち上がり、人類史上輝かしい業績を上げながら生涯経済的豊かさを追求しなかったことは素晴らしい。感想は取りとめないが読み応えはあった。

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