2015年6月3日水曜日

読後感「患者の「危機管理」23のノウハウ 」田島知郎著

書名が長いので後半「―病院で今、起きていること 自分と家族の命を守るために」を割愛している。

著者が高校の2年先輩で、先日同窓会での講演を聞いて非常に興味深かったので、改めて読書に及んだ。後期高齢者ともなると病院通いが頻繁となったり、医師の処方で服用する薬が多くなるのは共通のことだろう。このことが経済的負担を増すことより、治療が適切であるかどうか、健康体回復に向かっているかどうかが遥かに重要であるのも同じだろう。

私も現在定期的に診てもらっている医者が2人いる。一人は掛かり付けの内科医で、基本的には一応何でも相談している。もう一人は大学病院の泌尿器科医で、掛かり付け医からの紹介に依っている。他にも定期的とまでは言えないが、整形外科であったり皮膚科であったり耳鼻咽喉科であったり歯科医もいる。どの医師とも意思疎通は良いと思っているのでさしたる心配はしていないが、大げさに言えば命を預けているのだから医師への関心は高い。

医者通いが多くなっている割には健康保険のお陰で医療費負担はそれほど多くはならない。更に、現在治療中の前立腺癌治療もそうだと信じたいが、日本の医療技術は世界的にも最高水準にあると思っている。

個人的前置きが長くなりすぎて申し訳ない。この本を読むと個人的思いと日本の医療実態はかなり異なり、多くの問題を含んでいることに改めて気づかされる。先ずその第一が日本の医療水準が世界最高の思い込みである。医療水準とは難しい概念かもしれぬが、一般的に医師一人一人の技能として考えた場合、専門医が多い日本の医療体制では総合診療が出来難いのは当然だろうし、必然的に診療機会が少なくなることから医師の医療技術水準の向上は期待し難いようだ。

ある米国企業では、日本駐在社員が急病を発しても極力日本の医療機関に頼ることなく、むしろ韓国での診療を勧めていると知ってはびっくりである。米国の医療制度は民間保険によるカバーが当たり前なので、治療も金次第で最低、といったイメージもあった。しかし、日本の健保制度がより優っているかと言えば、それも違うようだ。米国の健保制度(メディケア)確立を目指すヒラリー・クリントンが日本に健保制度の視察に来て「何ら参考とならなかった。」と言ったそうだ。

何故だろうか、著者は健保制度以前に、医師が経営者にならざる得ない医療制度に問題の根幹があると指摘する。私自身も毎年のようにCTとかMRI検査を受けて何も感じないでいたが、我が国では当たり前のように行われているこれらの検査は勿論、殆どの医院に備え付けられているレントゲン検査についても、本当に必要な時にだけ使われているかと言うことからして、大分問題があるようだ。日本の医療機器保有数は世界水準からすると群を抜いているとのこと。

街の医院がレントゲン1台でも設置すればそれなりのコストが掛かり、その回収を急ぐ心理が働くことは否めないだろう。一事が万事で、医者が経営者になるとどうしても過剰診療が発生せざるを得ない。日本のお医者さんしか知らないので気が付かずにいたが、救急医療に屡問題が発生していることや医療過誤に関すること、入院期間の問題など、本書で指摘されると日本医療制度には問題が多そうだ。

当然行政も絡んでくるので、問題の解決も容易ではなさそうである。しかしお医者さんの世話にならざるを得ない我々としては、知っておいた方が良いことが沢山書いてある。


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