2011年7月2日土曜日

映画「JFK」を見て

昨夜たまたま留守番だったので、今週水曜日にNHKのBSで放送された際に録画した映画「JFK」をゆっくり見た。3時間を超える長編で20年前に公開されたものである。公開当時に映画館で見た記憶はあるのだが、内容は殆ど忘れていて今回見て全く新鮮であった。内容はニューオーリンズの地方検事ジム・ギャリソンがケネディー暗殺の犯人とされたオズワルドという人物に記憶がありショックを受ける。ニューオーリンズの法曹関係者の間ではオズワルドという人物は、地元のキューバ人団体と頻繁にトラブルを起こし有名であった。彼はすぐにこの人物の調査を始める。

調査の範囲は、テキサスからワシントンまでニューオーリンズ地方検事局には些か荷が重いが、拡がって行く。そして調べれば調べるほど、オズワルドは組織的陰謀を隠すための生贄との思いが強くなる。しかし地方検事が出来る捜査は限界があり、何故かFBIとかCIAといった国家組織の協力を得られず時は瞬く過ぎて、国家的調査ウォーレン報告書も発表されオズワルドの単独犯説が確定的になる。それでも彼の執念は消えないが、証拠証人が次々と無くなったり消されたりしていく。そんな苦労を克服して、黒幕の一人と目されるニューオーリンズ財界の大物(オズワルドと共にCIAのエージェントである事を確信している)クレイ・ショーを逮捕して裁判に持ち込む。

この裁判における検事調述が最後の山場になり、如何にこの国が不正な組織に乗っ取られつつあるかを延々と述べる。要するに革新派であったケネディー大統領は冷戦やベトナム、或いは対キューバ等の戦争紛争によって巨大な利益を上げている産軍複合体にとって好ましい人物ではなかった。そこで、ここに属するトップが巧妙な仕掛けを講じた。それは実に巧妙に仕組まれ、そこには国の多くの組織が関与している事を力説強調する訳だ。しかし最終的に陪審員の判定で被告は無罪とされてしまう。従ってジム・ギャリソンの追及は結実することなく、多くの疑問を残しながらJFK暗殺事件は幕を閉じ、関係書類は半世紀後(だったと思う)迄封印されてしまうと言うところで終わっている。

娯楽性の高い映画の事だ。何処まで事実で何処から虚構かは分からいが、ジム・ギャリソンとクレイ・ショー裁判があったのは事実。映画の中で頻繁に登場する8ミリ記録映画(ザプルーダー・フィルムと呼ばれ486コマで構成)も実在する。大統領が狙撃されたのが12:30で死亡の公表が13:38、その時刻には犯行現場は教科書ビル6階でオズワルドが犯人として特定され、13:56にはオズワルドが逮捕されてしまう。そのうえ、14:15には検視を済ませた遺体が軍用機に乗せられ、ジョンソン副大統領と共にワシントンに向かってしまう。そしてこの飛行中にジョンソン氏が大統領に就任してしまう事になる。検視書類なんかも全て封印され現在は確認できないのも事実。
もしジョンソン一派のクーデターだったと仮定すれば、物凄く手際が良い処理である。

日本にも「国家の罠」なんて本があり、国家権力に逆らった人間が権力に絡め取られて、市民権や人格を抹殺されるなんて事がひょっとしたらあるのかな、と思ったりしないでもない。日本で怖いのはお上と言っても、闇で実際に差配しているのは「官僚」と言う組織だろう。逆らったり盾突くと個人的、社会的に抹殺される事があるかもしれぬが、日本の官僚にクーデターを起こすパワーは無いだろう。

アメリカの闇の権力者は少しスケールが異なりそうだ。この映画に描かれた産軍複合体とは如何なる組織か。実態をイメージすることが難しいが、彼の国の警察刑事組織と情報機関が極めて複雑で、それぞれが独立して存在し、一見協力しあっているようにも見えるが、飽くまで別組織だ。これを誰かがうまく使い分ければ、映画が示唆するように大統領暗殺までが可能になるかもしれない。

哲学的には一方に資本主義、片方に民主主義が存在する。ここから邪悪なものが生まれる筈がないと思うのは、少し単純に過ぎるかもしれない。今でも民主主義の優等生みたいに言われるが、実態はかなり資本の原理に傾斜した不平等な国と言う説もある。そして次から次へと世界中で戦争を絶え間なくしているのも事実。日本にとっては最も頼りになる同盟国と言うが、小生には不気味で恐ろしい国家である。

1 件のコメント:

ETCマンツーマン英会話 さんのコメント...

こんにちは。『JFK』を観たときに、「はたして日本ではどうなんだろう?」と強く思いました。『国家の罠』は佐藤優さんの書籍ですね。以前から気になっていた方だったのですが、未読でした。この機会にぜひ読んでみようと思います。ご紹介に感謝です。