2010年7月30日金曜日

読後感「謙信びいき」火坂雅志 著

豊島区の図書館に行ったが、触手の動く小説が無かったので、前回の久世さんの随筆同様火坂氏の随筆を借りてきた。彼がNHK大河ドラマ「天地人」の作者である事を知ったのは最近の事で、「天地人」についてはドラマも見ていないし、本も読んでいない。安国寺恵慶を描いた「墨染の鎧」と、後は伊達正宗について書いた「臥竜の天」を下巻の途中まで読んだだけだ。

この時に思ったのだが、時代小説は戦国時代のある武将を書くとすれば、当時の横の繋がりをかなり克明に調べなければ書けない事に思い至った。逆に言えば1人を調べれば、他に何人分ものネタが揃いそうだとも思ったりした。中国地方の恵慶の後で東北の政宗伝を読み始めて途中で止めてしまったのは、そんな事を感じた事もある。しかし今回この随筆を読んで、それは著者に対して失礼な事と思い至った。

やはり時代小説は中途半端にいい加減な事を書く訳にはいかず、綿密な時代考証が必要で、当事者に関しては書かれている事の何倍に当たるか想像できない程、細部に亘って史料の検証や伝承のチェックをしているようだ。更に歴史については日本国だけでなくアジアは勿論もっと遠い国々との関係に迄実地に見聞する必要もあるようだ。

そういった努力や訓練があって初めて作家としての想像力イメージを膨らませる事が可能になるのだろう。この本はそういった準備運動と言うか、様々な活動(取材)の中で小説として活字なっていない事実や著者の思いが述べられていて、楽しい読み物になっている。

著者は越後新発田の出身、著者よりすこし年寄りとは言え、お隣信州長野の出身の小生も紛う方無き「謙信びいき」である。尚、もっと身近な真田一党一族に関する話や「えご」が何故信州で食されるかについてなど、我が故郷について知らない事も沢山知る事も出来たし。もの書きという仕事をする人は大したものだと大いに感心した。

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